CS(カベルネ・ソーヴィニヨン)とSB(ソーヴィニヨン・ブラン)
「ワインと言えば濃い赤でしょう、とりわけカベルネ・ソーヴィニヨンがいいよね」という人は世の中に多いのではないでしょうか。カベルネ・ソーヴィニヨンが好きな人でソーヴィニヨン・ブランも大好き、という人は稀だと思います。両者は全く酒質の違うワインと認識されています。
カベルネ・ソーヴィニヨンは赤ワイン用の代表品種で果皮の色が濃く、タンニンも多く、渋味のあるしっかりしたボディがあるワインになります。世界的にも数々の銘醸赤ワインがあり、代表的なのはフランスのボルドー地方です。一方、ソーヴィニヨン・ブランは青い草のような香りやフルーツのような香りに特徴があります。フランスではロワール地方、新しい産地ではニュージーランドが有名です。
さて、名前から類推できるかもしれませんが、両者には非常に深い関係があります。カリフォルニア大学デービス校から1997年に出た報告では、DNA鑑定の結果、カベルネ・ソーヴィニヨンはソーヴィニヨン・ブランとカベルネ・フランの自然交配品種だということが明らかになっています。
遺伝学的関係が徐々に明らかに
遺伝的なルーツが明らかになったのはわずか20年前のことですが、それより以前からカベルネ・ソーヴィニヨンという名前は存在していましたから、昔の人は知っていたのでしょうか。ソーヴィニヨンという名前はフランス語の単語“sauvage”から由来していて、“wild(野生の)”という意味だそうです(Sweet(2008))。赤ワインの主要品種として知られているカベルネ・ソーヴィニヨンのルーツにソーヴィニヨン・ブランがあるというのは不思議なかんじです。
カベルネ・ソーヴィニヨンのワインとソーヴィニヨン・ブランのワインを飲み比べてみて遺伝学的なルーツを味わいから感じ取ることはできるでしょうか。そもそも赤ワインと白ワインですから難しそうです。もし、カベルネ・ソーヴィニヨンの白ワイン(黒ぶどうだけで作った白ワインのことをブラン・ド・ノワール(branc de noir)といいます)があれば、それがソーヴィニヨン・ブランのような味わいかどうか確認できますね。
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黒ぶどうから白ワイン
世の中にはいろいろな珍しいワインがあります。カベルネ・ソーヴィニヨンから作られた白ワインも探せばあるのです。写真は南アフリカのワインで、カベルネ・ソーヴィニヨンの白ワインです。White Cab(白いタクシー、日本だと略して白タク)という、ちょっと洒落た名前がついています。カベルネ・ソーヴィニヨンは黒ぶどうですが、果皮を取り除いてワインにすれば白ワインが造れます。ラベルを読まずに、軽い気持ちで“白ワインが飲みたい”と適当にセラーから取り出し飲んだとき、これは間違いなくソーヴィニヨン・ブランから造られたワインだと勘違いしました。ふとラベルに目がとまり、まさか!という気持ちになりました。ぶどうのDNAということについて考えさせられたワインでした。ワインとは奥が深い飲み物ですね。
これから、皆さんのワインライフに少しでも貢献できれば幸いです。
参考文献
Bowers, John Bowers and Carole Meredith (1997), “The parentage of a classic wine grape, Cabernet Sauvignon” Nature Genetics 16(1)
Sweet, Nancy (2008), “Cabernet Sauvignon at FPS” FPS Grape Program Newsletter
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