あまり知られていませんが、ブルガリアはワイン発祥の地の候補としても挙げられるほど、昔からワイン作りが盛んな国です。生産されたワインの60%以上が輸出されるなど、ワイン輸出大国でもあります。
ブルガリアワインの特徴
現在のようなワイン産業が始まったのは、1950年代からです。1960年代後半から、カリフォルニア大学デイヴィス校のメイナード・アメリン教授らが醸造設備や技術革新を行ったことで、高品質なワインを作る東ヨーロッパを代表するワイン生産国になりました。
ブルガリアでも他のヨーロッパ諸国の例に漏れず、特定地区で作られた上質ワインを保護するワイン法を制定しています。しかし、生産されるワインの80%以上がテーブルワインのカテゴリーに属します。ただし、ブルガリアの上質ワインはブドウの産地や醸造地が異なることから、原産地呼称を名乗っていないワインもあります。必ずしもワイン法による分類だけが、ワインの質を決めるということではないということも言えるでしょう。また、ブルガリアではワインの他に、ラキアと呼ばれるブランデーも作られています。これは白っぽい透明のブランデーで、主にブドウの搾りカスを蒸留して作られます。イタリアのグラッパや、フランスのマールとほぼ同じ製法です。
国内産地の紹介
ブルガリアのワイン産地は主に5つに分類されます。ドナウ平原の北部、ストゥルマ谷南西部、バルカン山麓部、トラキア平原の南部、黒海沿岸の東部です。
ドナウ平原の北部とワインの特色
ブルガリア北部に広がる地域です。ドナウ川の南や平野部を中心に広がっています。気候は大陸性気候で、夏の平均気温は20~24度くらいと過ごしやすい日が多いです。冬は-18度まで冷え込むこともあり、ブドウが凍りそうな日もあります。作られるブドウはブルガリア原産のものの他に、カベルネ・ソーヴォニョンやメルロ、ソーヴィニヨン・ブランやリースリングなどの外来種も多く生産されます。
ストゥルマ谷南西部とワインの特色
ブルガリア南西部にある、ストゥルマ渓谷流域に位置する地区です。栽培面積は比較的小さいエリアです。この地域では、この地方独特のシロカ・メルニシカ・ロザという黒ブドウがもっとも多く栽培されています。きれいなルビー色とフルボディの味わいが特徴です。
バルカン山麓部とワインの特色
バルカン山脈の南丘陵に広がるローズ・ヴァレーという地域があります。ここでは、ブルガリア独特のミスケトが広く栽培されており、辛口の白からやや甘口まで作られます。他にも、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロから辛口の赤ワインが作られています。
トラキア平原の南部とワインの特色
ローズ・ヴァレーの南、ブルガリアの何部に広がるトラキア平原にもワイン産地があります。この地方の中央部に位置するアセノヴグラウドなどの周辺地域で、ブルガリア固有品種のマルブッドが栽培されています。マルヴッドから作られるワインは、熟成向きでフルボディ、黒コショウやシナモンなどのスパイシーな香りが特徴的です。ここでは高品質なルヴットが作られています。
黒海沿岸の東部とワインの特色
ブルガリアの東部、黒海沿岸の地域です。穏やかな気候で、ブルガリア固有品種のディミャットなどの生育に向く地域です。ディミャットから作られるワインは、桃のようなアロマを持つフルーティでフレッシュなワインになります。
ブルガリアワインの魅力は長い歴史
ブルガリアのワインは、他のヨーロッパ諸国のワインと比べると日本の店頭で目にする機会はまだまだ少ないかもしれません。しかし、ワイン発祥の地の候補にも上がるほど歴史が古く、ブルガリア固有の品種もたくさんあるワインとゆかりの深い国です。ブルガリアワインを見かけたときは、ぜひテイスティングをしてみてください。
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