海外でのワインの値段
海外への旅行や出張でワインの値段を目にすると、日本と比べて高いとか安いとか、随分と値段が違うといった感想をもつことがあると思います。
たとえばフランス産ワインを考えてみましょう。中国や韓国といったアジア諸国では日本より高めの値段が設定されていることが多いですし、オーストラリアでもフランスワインの値段はフランスよりずっと高いです。何が値段に影響しているかと考えるとき、真っ先に思いつくのは輸送費でしょう。ですが、輸送費など物流コストだけでは、同じフランス産ワインの値段が国によって大きく違うことを説明できません。大きく関係してくるのは税金です。
日本のワインに係る税金
諸外国と比べると、ワインに係る日本の税金は良心的です。私たち消費者はワインを購入する際に8%の消費税を払いますが、生産者はワインを出荷する際に酒税(移出課税)を払います。日本では酒税(お酒にかかる税金)は、ワインに限らず、酒類が製造場から移出(持ち出)される時点で、そのお酒の種類ごとに数量に応じて課税されます。1
種類ごと、数量に応じて変わりますので、簡単に答えることはできないのですが、40度のアルコール度数のウィスキー1本で280円ほどと言われています、ワインのアルコール度数は低いので税金も低くなります。2
仮にということで、おおよその税金を計算しますと、750ml入りのワインボトル1本で移出課税は60円(1klで80,000円なので)です。ボトル1本の値段が1,000円とすると、消費税が80円かかり、酒税が60円とすると、合計140円の税金となります。
日本で売られているワインの3分の2は輸入ワインです。日本に持ち込まれる輸入ワインは、海外旅行等による持ち込み、海外から個人として取り寄せる場合、営業として輸入する場合で状況が違いますし、ワインの金額、どこの国から輸入するかによっても関税額が異なり複雑ですので、ここでは議論しません。
オーストラリアのワインに係る税金
オーストラリアは、小売店で売られているワインの価格の約42%が税金です。税金の内訳は、卸の時点でかかる税金(WETと呼ばれます、Wine Equalization Tax)が卸価格の29%、小売りの時点でかかる税金(GSTと呼ばれます、Goods and Service Tax。消費税のようなものですが、日本と違い、生活必需品にはかかりません)が10%、単純に足し合わせると合計約42%(1.29×1.1=1.419)です。仮にボトル1本20ドルのワインがあると、8.4ドルが税金という計算になります。ただ、価格に比例して小売価格に転嫁しているケースばかりではないようですし、ワイナリーの売り上げの150万ドル(1豪ドル81円として1億2,100万円ほど)まではWETがかからない仕組みになっていますので、ワイナリーの店頭での販売を少し値引きしたりする小規模なワイナリーがあるようです。
先のボトル1本1,000円の例では、日本でワインに係る税金は約13%になりますので、ワインを生産し輸出もしているオーストラリアで、ワインに係る税金が高いことがわかります。輸入されたワインについてもWET、GSTがかかります。
日本国内で醸造されるワインの酒税は、ワインの値段に関係なく数量に対する税金ですが(輸入ワインは少し複雑です)、オーストラリアのWETは価格に対する税金ですので、高いワインほど税金も高くなります。Equalizationは単語では平等、平衡といった意味ですが、高いワインにはより高い税金ということなのでしょうか。
日本で飲むオーストラリア産ワインは、オーストラリアでの小売価格よりも安いことがあります。日本の輸入時にかかる税金や輸送費よりも、オーストラリア国内でかかる税金が高いことを物語っています。最近は、自由貿易協定(FTA、Free Trade Agreement)などを結び、関税を撤廃するケースも増えていますので、日本がオーストラリアと結んだ協定(これはEPA、Economic Partnership Agreement、日本語で経済連携協定と呼ばれます。自由貿易も含むもう少し広い提携まで含まれます)の影響もあります。ボトルワインに係る関税は7年かけて少しづつ撤廃されています。
オーストラリアで飲むフランス産シャンパーニュは日本よりも高い値段です。輸入ワインには輸送費などがかかりますがWETもかかりますので、小売価格は高くなるのです。3
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中国のワインに係る税金
中国はワイン生産大国であり、ワイン輸入大国でもあります。中国は国産ワインの定義が曖昧で、輸入バルクワインを詰めなおしたものも、中国で瓶詰めしていれば国産ワインとして販売されていますので(日本にも類似の課題はあります)、中国に関しては、輸入ワインをめぐる税金の移り変わりに注目します。
中国に輸入されるワインには43%の関税(英語ではICDと呼ばれます、Import Customs Duty)が課されます。この税率は、国により異なり、かなり軽減されている国もあります。ここに、間接税(VAT、 Value Added Tax。日本語では付加価値税と呼ばれる間接税)が17%、消費税(CT、Consumption Tax)が10%かかります。単純に足し合わせて考えると、輸入ワインには70%と高い税率が課されていることになります。
高い関税が課されていますが、中国に輸入されるワインは増えています。でも少し問題もあるようです。この話題は「中国の輸入ワイン市場と密輸問題」へ続きます。
ワインに係る税金の不思議
ワインに係る税金は、日本では酒税と消費税、オーストラリアではWETとGST、中国ではICD、VATと消費税がそれぞれかかることをみてきました。輸入の際にかかる関税もありますので、ワインひとつとってもいろいろです。お隣の国、韓国では、お酒には教育税が課されていますので、ワイン(日本と同様果実酒と呼びます、韓国語では과실주)の価格にも教育税が含まれています、面白いですね。4
海外でワインの値段を目にするとき、税金の影響がどのくらいあるのかなど、考えてみるのも面白いかもしれません。
===文中の補足説明===
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作られたものが他のお酒の製造を目的として出荷(移出)されるなどの場合は、届け出すれば酒税が免除されるのですが、これを未納税移出といいます。詳しくは国税庁の「お酒についてのQ&A」を参照下さい。http://www.nta.go.jp/taxes/sake/qa/01.htm
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ウィスキーの税金はサントリーのサイト(https://www.suntory.co.jp/customer/faq/001778.html)を参照。日本ではアルコールは、発泡性酒類、醸造酒類、蒸留酒類および混成酒類の4種類に分類されます。それぞれの分類ごとに異なる税率が適用されるのが特徴ですが、4種類に分類された酒類は、さらに17品目の酒類に区分されますし、1kl当たりの税金となるため、ボトル1本当たりいくらという問題には答えるのが難しいのが現実です。ワインの場合は720ml入りも750ml入りもありますのでなおさらです。
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オーストラリアのWETは以下参照下さい。
https://www.ato.gov.au/Business/Wine-equalisation-tax/、http://www.agriculture.gov.au/ag-farm-food/wine-policy。
GSTついては以下になります。
https://www.ato.gov.au/Business/GST/
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以下のサイトを参照しました。
https://m.blog.naver.com/PostView.nhn?blogId=0323lena&logNo=220732515290&proxyReferer=https%3A%2F%2Fl.facebook.com%2F
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