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第8回 冬の味覚の絶対王者、越前蟹とNZワインのマリアージュ

神原博之
神原博之


11月6日に漁解禁される貴重な冬の味覚、越前蟹!

前回の上海蟹につづき、またまた蟹ネタになってしまい恐縮ではありますが、「」の話題を取り上げるということで、ご勘弁くださいませ。
さて、今回は冬の味覚の王者ともいわれる、「越前蟹」を取り上げたいと思います。
 
 「越前蟹? たしかに名前は聞いたことがあるけど食べたことがない……

そんな人もいるかもしれませんので、まずは越前蟹が冬の味覚の王者たる所以を、少しだけ紐解いていきたいと思います。越前蟹は、全国のズワイ蟹のなかでも最高峰ブランドとして知られており、福井県の越前漁港で水揚げされたオスのズワイ蟹です。その越前蟹の漁が11月6日にいよいよ解禁され、私たち消費者が食べることができる時期が到来したのです。



越前におけるズワイ蟹漁の歴史は国内で最も古いといわれており、「越前蟹」という名称が出てくる最も古い記録は16世紀の初め、安土桃山時代に京都に住んでいた三条西実隆の日記に「越前蟹」という表現で垣間見ることができます。
つまり、すでにこの頃には越前の国(現在の福井県)ではズワイ蟹が漁獲されていたことが推測されています。また、現在では全国で唯一の皇室献上蟹でもあり、その歴史は明治43年12月に越前蟹を皇室に献上したという記録も残っています。

では、そんな越前蟹の王者たる美味しさの秘密とは、なんでしょうか。それは、「港に近い漁場」と「越前海岸の特徴」、このふたつが真っ先に挙げられます。

越前港沿岸は急深の海で、カニの生息水域である水深250~400mまで港から約40~50kmと近く、時間にして約1~2時間で漁場に到着します。つまり、水揚げされたばかりの越前蟹は新鮮なうちに出荷することができるのです。
また、越前沖は暖流と寒流のぶつかる漁場で、カニのエサとなるプランクトンや小魚、甘えびなどが豊富なのです。さらに、冬の寒さ、海水の冷たさもひとつの要因と言われ、越前海岸沿岸の地形と豊富なエサ、冬の海水温度など、最適な環境が美味しい越前蟹を育てているというわけです。

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本物の越前蟹と認められたカニだけにつけられる黄色いタグ

越前蟹は、全国のズワイ蟹のなかでも最高峰ブランドだと述べましたが、それを証明するのが、こちらの黄色いタグです。

このタグは、セリにかけられる前につけられるのですが、一度取り付けたらはずすことはできない構造になっています。そして、このタグがつけられるカニの条件が次のとおりです。

・越前港を筆頭に福井県の漁港で水揚げされたズワイ蟹
・港に着いても、まだちゃんと生きているズワイ蟹
・身がしっかり詰まっているズワイ蟹

こうした厳しい条件や徹底した管理こそが、他のズワイ蟹と一線を画し、越前蟹を日本最高峰のブランド蟹にしています。越前蟹はどんなに安くても、1杯2万円弱と値は張りますが、その価値や美味しさを知る越前蟹ファンは毎年首を長くして待ち望んでいるというわけです。

越前蟹がほかのズワイ蟹と比べものにならないほどの美味しさには、甘味があってやわらかなカニ身だということが特徴として挙げられます。さらに、濃厚なカニ味噌と身をからめていただくと、もうそれは至福で無口なひとときが訪れます(笑)


越前蟹とニュージーランドワインのマリアージュ

越前蟹の魅力がわかったところで、越前蟹の楽しみ方、さらにはニュージーランドワインとのマリアージュをご提案していきたいと思います。その前に、「カニを食べるのは好きだけど、さばくのが苦手」という方に、誰もが自宅で簡単にできてしまう、カニのさばき方を伝授していきましょう。

こちらが、さばく前の越前蟹です。
まず、足を全部とってしまい、ふんどしをはずしてお腹の面を上にして開きます。すると、甲羅のなかにはたっぷりのカニ味噌が入っているので、カニ味噌をスプーンなどで別の皿に移しておきます。
カニ味噌を取り除いた甲羅をきれいにしたら、肩まわりのカニ肉をほぐして甲羅に入れていき、最後に別皿のカニ味噌を上にのせます。それが、こんな感じです。


続いて、先にとっておいたカニの脚は、カニバサミなどでていねいになかのカニ肉だけを残していきます。越前蟹は、ほんとうに身が柔らかいので、やさしく丁寧にさばきましょう。また、ほぐしたカニ肉は水分が出るので、このようにキッチンペーパーなどを敷くのを忘れずに。それが、こんな感じです。


これで、下ごしらえは終了。あとは、調理していきます。
いろいろなカニ料理が考えられますが、やはり越前蟹の味を最大限堪能するのは、越前蟹の甲羅焼き、そして足肉は天ぷらでいただくというのが、僕が長年の経験からたどり着いたベストな調理法です。


自宅にある、魚を焼くグリルで甲羅ごとグリルをするだけ。仕上がりの目安は、カニ味噌がフツフツと泡立ってくれば食べごろです。
そして合わせるワインは、ニュージーランドのホークスベイ産、「CHURCH ROAD Grand Reserve CHARDONNAY 2013」です。
完熟のピーチやグレープフルーツなどの香りと味わいを彷彿させ、ミネラルや酸もしっかりとあり、余韻の長いとても上品なシャルドネが、越前蟹とのマリアージュにぴったりです。


そして、足肉は天ぷらでいただきます。
このように、カニの赤身がわかるくらい衣はできるだけ薄いほうがいいでしょう。
ひと口食べた瞬間に、越前蟹の甘みと旨みが口のなかいっぱいに広がるので、誰もがほかのカニとの美味しさの違いに気づくはずです。きっと、一度食べたら、やめられません!(笑)
ちなみにですが、越前蟹(オス)の漁期間は3月までなので、3月までは美味しい越前蟹を食べることができます。


漁期間たったの2カ月!越前蟹のメス「せいこ蟹」を楽しもう!

一般的に越前蟹と呼ばれるのがオスなのに対し、メスのカニは「せいこ蟹」と呼ばれています。
このせいこ蟹、資源保護のため漁ができる期間はたったの2か月だけという、極めて貴重なカニだといえます。そして見た目の違いはその大きさ。オスの越前蟹の約3分の1程度のサイズなので、一目で違いがわかります。
そして、味の特徴の違いは何といっても味噌と卵です。


このように、お腹に抱えているプチプチとした食感の外子、甲羅のなかにある濃い橙色でコクのある旨みの内子、そしてまったりと濃厚な味わいの味噌が、多くの食通を唸らせてきました。

雄のカニは足を食べるが、雌のほうは甲羅の中身を食べる。それはさながら海の宝石箱である
これは、芥川賞作家である開高健の言葉です。
それもそのはず、特に内子は「赤いダイヤ」とも呼ばれ越前蟹のオスでは味わうことができない高級品として扱われているのです。もちろん、小さいながらもそのカニ身も甘みがあって上品な味わいなのは、もはやいうまでもありません。



では、超カンタン!セイコ蟹のさばき方を伝授いたしましょう。
まず、上の写真のようにお腹に抱えている外子をはずしておきます。次に、足をお腹側に折るようにして脚を取り外しておきます。
すると、甲羅のなかはこのようになっています。


上に乗っているのが味噌、そして、下にあるオレンジのものが内子です。


あとは、甲羅に脚のカニ肉と、最初に外した外子を盛り付けていけば完成です。
ここでの注意点は、外子には白い筋のようなものが入っているので、それを取り除きながら卵をむしっていってください。

【参考動画】




こちらのセイコ蟹、食べ方は味噌、卵、カニ肉をどんぶりにすることも多いようですが、ワインと合わせるならもちろん、このようにボイルのみでいただきます。
このせいこ蟹にも、先にご紹介したシャルドネを合わせれば、さらにせいこ蟹の旨みを堪能することができます。



いかがでしたでしょうか。
食べられる時期に、限りがある。
食べられる数にも、限りがある。

だからこそ、越前蟹は多くの人たちに愛されるのかもしれません。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。



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