中国のブドウの栽培とワインの製造は、漢の時代からすでに始まっていました。ワイン造りが本格化した唐代からワインの商業化が進んだ元代にかけてワイン文化が花開きました。しかし、明代に国策で白酒や紹興酒が推奨されたことから中国のワイン文化は次第に低迷し、清代で王朝が弱体化すると、国土や経済の荒廃によりワイン造りはすっかり衰退してしまいました。
中国ワインの特徴
20世紀に山東半島で近代的なワインづくりが始まり、ヨーロッパ品種のブドウを使った高品質なワインの生産も行われています。
国内産地の紹介
中国のワイン産地は、ヨーロッパ系品種を栽培して近代的なワインを作る産地と中国独自の製法で作られるワインが特徴の産地に分かれます。前者は山東省煙台や寧夏回族自治区(ニンシャホイ族自治区)、後者には雲南省弥勒県や中国西部の新疆ウイグル自治区があります。
山東省煙台とワインの特色
中国近代ワインの祖、張裕ワインの発祥地です。清代末期、欧米列強の進出が盛んになり、1866年に開港した煙台(えんたい)の地に目を付けた華僑の張弼士(ちょう ぴし)が1892年設立したのが「張裕葡萄醸酒公司」です。当初から欧米で通用するワインづくりを目指し、リースリングやシャルドネ、カベルネソーヴィニヨン、メルローなどを栽培していました。2001年にはヨーロッパ最大のワイングループでもあるカステルグループと正式に提携し、煙台に中国初のシャトーとなる「シャトー・チャンユー・カステル」を建設しました。
寧夏回族自治区(ニンシャホイ族自治区)とワインの特色
中国北西部、ゴビ砂漠の南部にあるこの地区は、中国で最も高品質なワインを作る産地として近年名を知られてきています。1983年には1か所しかなかったワイナリーが現在は200を超え、シャンパンで有名なモエ・ヘネシー・ディアジオ社もこの地に出資して「ドメーヌ・シャンドン」というワイナリーを創設しています。ボルドー、カリフォルニア、南アフリカ西岸地区などに続く産地と期待され、ワインの「ゴールドラッシュ」とも呼ぶべき開発が進んでいます。また、寒冷な大陸性気候により、カナダやアメリカ北西部が主産地のハイブリッド種のヴィダルが栽培され、良質なアイスワインも産出されています。
新疆ウイグル自治区とワインの特色
中国西部の古くからのブドウとワインの産地です。収穫したブドウを手でつぶし、布で漉してから果汁と同量の水と好みの量の砂糖を加えて元の果汁の量になるまで煮詰め、カメで保存するという伝統的な作り方の家庭用ワインを製品化しているワイナリーもあります。
雲南省弥勒県とワインの特色
20世紀初めに入植したフランス人宣教師が故郷に似たカルストの地形にブドウの栽培を試み成功させたのがこの地のブドウ栽培の始まりと言われています。フランス領インドシナとの鉄道の直結を機に、この温暖で安定した気候の地をブドウ栽培とワイン醸造の地として、フランス本国より木樽と技術指導者を入れ本格的に生産を開始しました。「ローズ・ハニー」という珍種はフランス本国でも虫害で絶滅してしまった品種で、黒酢の醸造からヒントを得て甕による熟成を特徴としています。
中国ワインが熱い!?
統計によると、中国人のワイン消費量は年々上がっていて、2014年現在は世界5位です。世界的にワインの消費量が減っているのに対し、いずれ、消費量世界1位になると予想されるほど中国のワイン市場は活気づいています。生産される種々のワインは新旧のやり方が入り交じり興味深いですが、「新世界の中の新世界ワイン」をつくって自国や海外のマーケットに中国産ワインを提供しようという熱い気持ちを持つ生産者たちもたくさんいます。
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