イスラエルでは、紀元前2000年頃にはワイン造りが発達していたと言われています。古代ではイスラエルワインは人気が高く、ローマ帝国各地に輸出されていました。
イスラエルワインの特徴
イスラエルのブドウは地中海を渡ってギリシャ、イタリアに広がりました。しかし、7世紀にイスラム教徒の支配下に入ったことにより、ワイン造りは禁止され、その後600年間のアラブ支配によって土着品種はすべて引き抜かれてしまいました。
近代的なワインの醸造技術がイスラエルに入ってきたのは19世紀後半で、ユダヤ人大富豪であるロスチャイルド家によりフランスのブドウが輸入され、最初のワイナリーがつくられました。その後、1980年代にはシャトー・ラフィットのエドモンド・ド・ロスチャイルド男爵が大規模な投資を行い、ユダヤ人のイスラエル帰還運動を支援するため、世界中のユダヤ教徒が飲めるコシャーワイン(ユダヤ教の戒律に従って造られたワイン)を生産するためのワイナリーを創設しました。これが現在でもイスラエル第一のメーカーである「カーメル」です。
その後、主にフランス、アメリカ(カリフォルニア)、オーストラリアから栽培と醸造の技術が入ってきて、イスラエルワインは1990年代後半から発展を遂げています。
国内産地の紹介
イスラエルの国土は四国と同程度の面積です。ワイン生産地はイスラエル北部のガリラヤ(ガレリー)地域及びゴラン高原、エルサレム周辺のジュデアン・ヒルズ、そしてイスラエル南部のネゲブ砂漠です。
現在栽培されている品種は、すべて外国から持ち込まれたもので、1980年代以降カベルネ・ソーヴィニョン、メルロー、シャルドネなどが増えています。
ゴラン高原とワインの特色
ゴラン高原は主に火山灰が降り積もった土壌で水はけに優れており、気候は比較的涼しく、夏季には灌漑により水が供給されます。これらの様々な自然条件や計画的な造園により、この地がワイン醸造用ブドウの育成に最適な土地とされています。火山土壌からくるミネラルが感じられるワインが特徴です。
ゴラン高原は、イスラエルを訪れたカリフォルニア大学デイビス校の醸造学教授コルネリウス・オウフの1972年の調査結果により、ワイン用ブドウの栽培の適地であるとされました。1983年にゴラン・ハイツ・ワイナリーが創設され、1987年には、そのフラッグシップワインであるヤルデン・カベルネソーヴィニヨン1984が、ロンドンで行われたコンクールで金賞を受賞しました。90年代には、ゴラン・ハイツ・ワイナリーの成功に刺激を受けた若い醸造家たちによるブティック・ワイナリーのブームが起きました。ゴラン高原では、最先端の栽培、醸造技術を用いた高品質のワインが作られています。
ジュデアン・ヒルズとワインの特色
ゴラン高原、アッパー・ガレリーと並んで高品質ワインができるとして今新たに注目を集めている産地です。エルサレムの北にある山岳地帯から南に広がる標高800メートルを超える石灰質土壌の地域で葡萄が栽培されています。傾斜がきつい土地で昼夜の寒暖差が激しいところです。ハーブの香りやスモーキーさが複雑に混じった陰影に富んだワインが多いのが特徴です。
ゲネブ砂漠とワインの特色
砂漠気候で年間降雨量がほとんどないゲネブ砂漠でのワイン生産は、イスラエル独自の灌漑システムと高度に進んだ品種改良の成果と言われています。雨がほとんど降らないため、ブドウの糖度が上がりやすく、ワイン醸造の要となる糖のコントロールが課題です。大規模生産が始まって間もないため、まだ生産量も少なく、これからの産地と言えます。
若い産地に期待
最先端の栽培・醸造技術を取り入れて、クリーンなワインを作る意欲的なイスラエルワインには、今後も注目していきたいと思います。
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